2026/07/18
コラム
【管理組合が知っておくべき新たなリスク】マンション大規模修繕工事を狙う「なりすまし」
大規模修繕を狙う「なりすまし」
近年、マンションの大規模修繕工事を巡り、住民になりすまして修繕委員会や理事会へ参加し、不正な業者選定を図ろうとする悪質な事案が報じられています。
報道によると、工事業者の関係者が住民の名義を利用して会議へ参加し、建築の専門家を装いながら議論を主導したり、自社や関連会社に有利となる提案や資料を提示したりするケースが確認されています。
マンションの修繕積立金は住民の大切な資産です。その意思決定の場に第三者が入り込むことは、管理組合にとって決して見過ごすことのできないリスクといえるでしょう。
巧妙な「なりすまし」の手口
この手口は、単に身分を偽って会議へ参加するような単純なものではありません。
まず、大規模修繕工事を予定しているマンションを調査し、対象となるマンションの全戸へ、
- 覆面調査員募集
- アンケート調査
- アルバイト募集
などの名目で、高額な報酬が記載されたチラシを投函します。
興味を持った住民から連絡があると、
「管理会社の運営実態を調査している」
「調査のため修繕工事の会議へ参加したい」
「住民として名義を貸していただけないか」
などと説明し、名義や住所、委任状などの協力を求めます。
協力の見返りとして、高額な商品券などが提示された事例も報じられています。
こうして住民の協力を得た業者は、その住民になりすまし、修繕委員会や理事会へ参加します。
つまり、名義を貸した住民には「調査関係者」を装い、管理組合や他の住民には「正当な住民」を装うという、二重のなりすましが行われるのです。
部外者が会議をコントロールする
住民として会議へ参加した人物は、一見すると部外者には見えません。
さらに、
- 「建設業界で働いていた」
- 「建築に詳しい」
- 「資格を持っている」
などと説明し、参加者から信頼を得ようとします。
その上で、
- 特定の施工会社を推奨する
- 他社の提案に否定的な意見を述べる
- 比較資料について一方的な説明を行う
など、会議の流れそのものに影響を与え、自社や関係会社が工事を受注できるよう議論を誘導していきます。
報道では、会議で使用された比較資料が実態と異なる内容で捏造されていたケースも紹介されています。
一般の住民だけで見抜くことは容易ではありません。
受け答えは自然で、建築に関する知識も持ち合わせているため、住民や専門家として違和感なく受け入れられてしまう可能性があります。
特に大規模マンションでは住民同士の面識が少ないことも多く、
「初めて見る方だが、住民なのだろう」
と思われ、そのまま会議へ参加してしまうケースも考えられます。
だからこそ、このような事案は一般の住民だけで未然に防止したり、なりすましを見抜いたりすることが難しいのです。
防止策
このような手口を防ぐためには、会議へ参加する段階での本人確認と運営体制の整備が重要です。
管理組合では、次のような対策が有効と考えられます。
- 顔写真付き身分証明書による本人確認を行う
- 委任状のみでの代理出席について運用を見直す
- 役員資格や参加資格を明確に定める
- 区分所有者や居住状況を適切に確認する
- 少しでも違和感がある場合は、第三者の専門家へ相談する
小さな違和感を見逃さないことが、大きな被害を防ぐ第一歩となります。
まとめ
このような事案は、規模が大きいマンションほど狙われやすい傾向にあります。修繕費が高額になりやすく、住民同士の面識が少ない為、業者側のメリットが大きいからです。
防犯カメラやオートロックなど、建物の防犯設備はもちろん重要ですが、それだけでは防ぐことのできないリスクも存在します。
これからは、「建物を守る」だけではなく、「管理組合・住民の意思決定を守る」という視点も、マンション管理には欠かせません。
弊社では、こういった事案への対応もさせて頂いております。
少しでも不安を感じた際は、お気軽にご相談にください。